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【一条ゆかり】
『アミ…男ともだち』一条ゆかり(集英社文庫『星降る夜にきかせてよ』収録)
全寮制の学園に、季節外れの転入生としてやって来たユーリックは、アーサー・マクナドルという少年と同室になる。
試験では常にトップ、同時に教師たちにも反抗し、部屋で堂々とマリファナを吸う彼に、学園の少年たちは皆一目置いていた。
やがて、ユーリックは面会に来たアーサーの妹、シュベールと親しくなり、誘われるままアーサーの住む城を訪れる。
そこで生活を共にするうち、ユーリックの心を占めていくのは、アーサーの方だったが……。
このほか、本作に収録「ハスキーボイスでささやいて」のように、
主人公がバンドの新しいメンバーに惹かれて自分をゲイではと疑う作品、
あるいは「さらばジャニス」のように、先輩に恋する少年を描いた作品もあるが、前者は少年と見えた相手が実は女性で、
後者は染色体を調べると、主人公の少年が実は女性だったことがわかる。
ゲイものというよりはジェンダーや性意識の常識に揺さぶりをかける作品だったともいえるだろう。
のちに香港映画「金枝玉葉2 ボクらはみんな恋してる!」で、ジェンダーの混乱がコメディー・タッチで綴られるが、
「ハスキーボイスでささやいて」は、そのテイストを先駆していた向きもあった。
『デザイナー』一条ゆかり(集英社文庫)
トップモデルとして活躍する亜美には、自分の実の母親を誰か知らないという秘密があった。
しかし、ある日、亡き養父母の墓を訪れた彼女は、再会した当時のお手伝いの口から、
自分を産んですぐ棄てた母親が、一流デザイナーの鳳麗香だと知る。
ショックで車の運転をあやまった亜美は、事故により足の神経を痛め、ステージに立てない体に。
絶望する亜美だったが、その前に結城コンツェルンの若きオーナー・朱鷺が現れる。
彼はなぜか、亜美の鳳麗香への復讐の手助けをしたいと申し出るのだった。
「あなたは足が不自由なままで終わるか、ぼくにすべてを預けて女王様になるか、すべてはあなたしだい」
という朱鷺の申し出を「あなたに賭けてみるわ」と受け入れる亜美。
朱鷺が亜美に与えた秘策とは、彼女を鳳麗香以上のデザイナーとして世に送り出すことだった。
朱鷺の与えた、短期プログラムによる厳しい英才教育も執念で乗り越えた亜美は
、望みどおり新進デザイナーとして注目され、実母・鳳麗香と栄光を競うライバルとなるが……。
メインストーリーは、華やかなファッション界を舞台にした母と娘の確執、ヒロインの愛を描くものだが、
その合間に点景として描かれる、朱鷺と彼の腹心で教育係の青年・柾(画:大矢ちき)の関係がホモエロティックな空気を醸しだして、
複雑な愛の位相を表現するのにひと役買っている。
作者曰く「最高にやる気出して好き勝手描いた、最高に好きな作品。一番好きなテーマ『プライド』をとことん追求した作品で、
タイトルも『プライド』にするかどうか迷ったほど」だそうだが、
確かに、繊細で豪華なファッション描写に、背景から小道具までびっしり描きこまれたゴージャスな空間演出、
何よりも自分の「プライド」を賭けて血みどろの愛憎劇を繰り広げる登場人物の姿は、一点の曇りもためらいもなく、
100%一条ゆかりワールド。とりわけ「私がなりたいのは常にトップよ。そうでなければ最低も同じだわ」という亜美のセリフや、
「私は女である前にデザイナーですわ」と言い切る鳳麗香の姿に、
女王・一条ゆかりの矜持がほの見える気がするのは、深読みだろうか。
ともかく、現在に至る一条作品のエッセンスの全てがここに凝縮され、
絢爛豪奢な輝きを放つ、代表作の一本なのは間違いがないだろう。
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