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shinobu様ご推薦 木原敏江

『風恋記』木原敏江(小学館文庫・全3巻)
物語は1204年、武蔵国秋葉庄で始まる。椿の森に棲む露近は、鬼の血を引く少年 だった。
彼は、豪族の息子融明と出会い、実の兄弟以上に親しくなる。融明はそ の額に天紋、露近は足の裏に地紋を持っていた。
坂東武者の勇壮な気風溢れる東国で、共に成長していく二人。しかし、鬼の血に 目覚めた露近は、その身を恥じて人柱として淵に沈む。
その頃、京では鎌倉幕府と対立する後鳥羽院が「王道を行くため異形のものを手に入れよ」という夢占に従って、
不二の者を探していた。一命をとりとめた露近 は、紆余曲折を経て院の手中に入り、闇の力で仕えると同時に院の閨に侍るよう になる。
作者の代表作「夢の碑」シリーズの一篇であり、シリーズ全体を通してのひとつ のクライマックスともいえる最長編。 
「天紋地紋合わせれば天下もとれる」との言い伝えどおり“不二のオニ”である 露近と融明が得た力によって見るもの、
それに対する彼らの選択が描かれる最終 章は、木原敏江という作者の持つ「もののあはれ」の精神が、あますところなく 表現されている。
中世鎌倉の風俗や史実を織り込んだ展開、鬼の力の不思議を描 く描写の幽玄さなど、
幻想綺譚としても歴史絵巻としても読み応えのある作品。 



『渕となりぬ』木原敏江(小学館文庫・全3巻)
室町時代の末期、丹波の猿楽三枝一座の次男・羽角は、能楽で天下を取るべく夢を抱く。
義理の弟として一座に加わる乙輪の舞の才能を活かすべく、羽角は舞台 に立つかたわら作劇に励むが、
共に舞台に立つ二人の間に流れる感情は、いつしか激しい恋情に変わり、深くつもって渕と化してゆく……。 
舞で結ばれた羽角と乙輪の宿命的な結びつきを中心に、斬新な演出と派手な演目 で日本一の人気座へと出世してゆく三枝座、
舞の真髄を追及する近江猿楽の白楊 太夫、古くからの名声を守る観世座など、
乱世を背景にしながら能に人生を賭けた人間群像を描く「夢の碑」シリーズ室町篇。 
タイトルは小倉百人一首ノ十三、陽成院の「つくばねの 峰よりおつる みなの 川 恋ぞつもりて 渕となりぬる」から取られ、
主人公二人をはじめ、それぞれ の登場人物の内に秘めた恋心が、物語の展開につれて溢れ流れて、
読了後はシリ ーズ中でもっともラブストーリーとしての余韻が深く残る。例により、世相風俗 、能舞台の描写なども巧みで美しい。 
尚,ラストシーンのモノローグは。「夢の碑」というシリーズそのもののテーマを 語ると同時に、作者自身の思想を語りきったものだろう。
長くなるが最後に引用したい。

「歴史の狭間に生まれ 光に揺れ 波に消えていった 男や 女や この世なら ぬ魔たちの物語を/
いま 急速に 魂すがれゆくこの国の 懐かしい美しい古事 (ふるごと)のかけらを 拾い集めて碑に記そう/
せめて さざめく花影や 夜 の歌や 星くずのように散りばめられた 誓いの言葉で飾ろう/
追憶の碑は 求 め 訪ねあてる人を待って いつまでも/失われた 夢の底に 沈んでいる…… 」



『摩利と新吾 ヴェッテンベルク・バンカランゲン』木原敏江(白泉社文庫/全8巻)
物語の始まりは明治末期。
天真爛漫なおひさま少年の印南新吾と、ドイツ人の母
をもつ混血の少年・鷹塔摩利は、赤ん坊の頃からともに育った無二の親友。
名門
・持堂院高校に入学した彼らは友人たちからも「おみきどっくり」と呼ばれ、
の絆の強さには定評があった。しかし、成長するにつれ、摩利は「新吾を親友としてではなく愛している自分」を、深く自覚していくのだった。
タイトルロールの摩利と新吾の、対照的な性格ながら互いにないものを補いあい
、成長しあっていく姿が魅力的で、
同時に彼らをとりまく持堂院の仲間たちの青
春模様も繊細に描かれた、大河青春群像劇。
サブタイトルの「ヴェッテンベルク
・バンカランゲン」とは、ドイツ語をもとにした作者の造語で「心優しき野蛮人たち」との意味だそうだが、
そのとおり登場する少年たちは誰もが逞しい足どり
で、それぞれの青春を力いっぱい生きており魅力的。
「木原敏江は天才である」
とは、評論家・中島梓の意見だが、青春のかけがえなさと儚さ、それを経て成長してゆく少年少女の姿を最も美しく、
かつ、死生観とロマンティシズムの両方を
兼ね備えて描ける漫画家・木原敏江の力量が十二分に発揮された代表作であり、
明治・大正・昭和にわたる人生ドラマとしても読み応えのあることが、時代を超
えて愛され、読み継がれている理由だろう。


『あーらわが殿!』木原敏江(秋田文庫)
のちの代表作『摩利と新吾』の母胎となった作品。
摩利と新吾の二人はもちろん、持堂院の仲間たちや、風魔教授なども登場し、設定はほぼ同じなのだが、
ストーリーは全く異なり、こちらはこちらで綺麗に完結している。日本初の男女共学高等学校のモデルケースに選ばれた、
持堂院となでしこ女学院。生まれて初めて異性と机を並べて学び、生活を共にするうちに生まれるトラブルと恋情を綴るストーリーながら、
その一方で幼なじみの新吾をひそかに愛する摩利の切ない想いが描かれている。
ラストはへテロの恋愛に着地するが、この頃の作品では、
同性愛が作品のひとつの背景として使われることもよくあった(例:「落葉だらけのロマンス」「いとし君へのセレナーデ」etc.)中、
摩利の恋心の描写は繊細で、同時に少年らしい毅然さを失わない姿が魅力的だった。
明治ロマンに美男美女、「椿姫」などとりまぜて、テンポのよい語り口で進んでいく物語、
畳みかけるようなクライマックスは、のちの作品ほどの完成度はないものの、木原流ロマンスの醍醐味はちゃんと味あわせてくれる。
本作などを読むと「木原敏江こそ少女マンガそのものであり、
木原敏江のマンガを嫌いなものは基本的に少女マンガファンではありえない」(米沢喜博『戦後少女マンガ史』より)という意見に頷いてしまう。



「水面の月の皇子」木原敏江(小学館文庫『青頭巾』収録)
「夢幻花伝」に登場した南朝の皇子・紗王とその従者・武緒の物語。
足利軍に追われるある夜、二人は青柳と名乗る謎の長者に命を救われる。
青柳のもとには、幼い頃武緒に危ないところを救われ、以来、彼に思いを寄せているという美女ましろが居たが、
武緒に彼女の記憶はなかった。「ただひとりの主君と決めた皇子
の悲願が叶うまでは、
わが身にも人の世の幸せなど無用と誓うたのだ」という武
緒と、彼に唯一無二の信頼を寄せる紗王との、
主従愛を描いた作品。二人の絆の
強さの前に、消えていくもののけたちの儚さが印象に残る。


「封印雅歌」木原敏江(小学館文庫『青頭巾』収録)
中世の武名高い領主・プロシオン家の美しい兄弟、デュアモンとロザーヌ。
父候
の死後、妾腹の兄デュアモンは、嫡子である弟ロザーヌや幼なじみセルリアの反対を押し切って僧院に入る。
やがて、デュアモンの耳に否応なく入ってくる、男
女を問わぬロザーヌの乱行の数々。
ロザーヌを諌めに戻ってくるデュアモンだっ
たが、二人の間にはけして口にしてはならない、封印すべき思いが渦巻いていた
封建時代のヨーロッパを舞台に、数奇な縁で結ばれた兄弟と、二人を愛する女性
の間の秘めた愛を描いた作品。タ
イトルどおりの優美な語り口で描かれる、愛と
運命の絆の強さが読後に余韻を残す。


「銀晶水」木原敏江(秋田文庫『銀晶水』収録)
12歳でエリュアール公爵夫人となった、まだあどけない少女ラウリ―ヌは、夫の名代としてブルゴーニュ大公の城へ伺候する。
彼女がそこで出会い、心惹かれた
美青年ヴィーサは、人質として大公に差し出された身の上だった。
一度は引き裂かれた二人だったが、数年後、祖国ブランスールの領主となったヴィーサとラウリーヌは再会し、
戦のさなかながら幸せを手に入れたように見えた
だが、ヴィーサの内面にひそむ毒が、彼を苦しめる。
それは、長年に亘って彼を
愛し、苛んだ大公の弟、ゾーネック公との褥の記憶だった……。
一見男女のラブストーリーと見えて、その実、屈折した男同士の愛を描いた物語。
作者独特の華麗な絵による、中世ヨーロッパの描写も魅力的。


鵺/木原敏江(全3巻)
木原敏江の語り部としての実力、画力の絢爛さが冴え渡る作品。
愛に飢えた美少年と浪人との恋が、彼らの過去と現在をめぐるあらゆる男女、
あらゆる思惑を巻き込みながら、悲劇へとなだれ込んでいくさまを描いて一点の揺るぎもなし。

散りばめられた江戸風俗も魅力的。散りばめられた複線と因果の糸をえいと結んで、
否応なしに終幕までもっていくさまは、まさにプロの技。
解説で萩尾望都先生もおっしゃっていますが「まさに絢爛たる屏風絵を見るような」作品です。



大江山花伝/木原敏江
鬼をテーマにした作品集。
どの作品も木原さんならではの「語り部」としてのうまさが冴え渡っています。
ことに、雨月物語の菊花の契りを土台に、鬼の少年と人間の念兄との悲恋を描く「花伝ツァ」と、
フィクションながら、世阿弥の半生をドラマチックに描く「夢幻花伝」がお薦めです

 
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