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shinobu様ご推薦 森川久美

【森川久美】

「春宵曲」「花月物語」森川久美(講談社漫画文庫『森川久美短編集 十二夜』収録)
初期森川作品を語るに欠かせぬイタリア趣味・演劇趣味を前面に出した作品集。
「春宵曲」は、井上ひさしの影響を受け「ギャグなのにシリアス、シリアスなのにギャグ、
という作品が描きたい」という思いのもとに描いた作品で、
女装の麗人・花子さんと同居する帝大教師・伊香保氏の日常と事件、その顛末を綴った作品。
二人のキスシーンも登場するが、花子さんはラストまで女装で通しているので、男女のラブシーンのようにさらりと演出されている。
「花月物語」は「いつともわからぬ昔のこと」の日本の物語。将軍の和子・義光は、謀反によって京を追われ、
東国に下る猿楽の一座に加わる。
「空に輝くあの月に/花は春は花(か)/夏は瓜(か)/秋は菓(か)/冬は火(か)/――と四季の景物つらね/それに因果の果の字を加えしものと」
花月を名乗り、自分を慕って身代わりに死んだ猿楽の少年・梅若の記憶を胸に秘め、心を閉ざし続ける彼だが、
やはり戦で妻子を失い、深く心の傷を抱えた大沢領主・越智頼員との出会いによって、氷の溶けるような変化が訪れていく。
作者にはあまり多くない純日本作品だが、繊細な描写と細部まで緊張感の漂う画力で読ませる。



『森川久美』森川久美 角川書店『ヴェネチア風琴』収録
19世紀初頭(推定)、他国の統治下にあった水の都・ヴェネチア。
かつて一大貿易国として栄えたこの地も、今はその面影を訪れる者たちに切り売りする観光都市へと立場を変えようとしていた。
しかし、ひとつだけこの地の栄耀栄華を伝えるものがあった。カルナヴァーレ(謝肉祭)だ。
このイタリア随一の祭典でひと稼ぎすべく、道化方として諸国を流浪する青年マルコがこの地を訪れる。
彼がふとしたはずみで出会う、名家フォスカーリ家の当主の息子・ジェンティーレ。
褪せ行く都のプライドの象徴のような彼に、マルコはいつしか強いシンパシーを抱き、カルナヴァーレの最後の日、
一夜を共にするのだが……。
絵柄・ストーリー共に、このデビュー当時から『蘇洲夜曲』あたりまでの森川作品にあった、
デカダンな香りが隅々にまで焚き染められた作品。
『南京路~』などの中国ものもいいけど、個人的にはこの人はヨーロッパを舞台にした作品のほうが好きです。
単に好みの問題ですが。

 
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