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shinobu様ご推薦 漫画

「歪(ひず)み絵の少年」鳩山郁子(青林工藝舎『月にひらく襟』収録
温室に、ピストル自殺した数学教師の幽霊が出るという噂のある男子校。
それを 聞いた薫生(ただお)は、ある日の教師との会話を思い出す。
絵を描くという彼 は、校庭でスケッチする薫生に、よく話しかけてきていたのだ。
彼は言った。
「薫生、僕が絵を描くときにはね」「僕は僕の魂を、その絵に注ぎ 込むつもりで描くんだよ」
「だから僕の描いた絵は魂をもっている」「僕が絵に なり、絵も僕になるんだ」 

やがて、薫生は自分が訪れてもいない温室で、自分の姿が目撃されていることを 知り、深夜、ひとり温室を訪れる。
そこで彼が見たものは……。 
繊細で透明感あふれる描線で描かれる、純粋無比な少年たちが魅せるファンタジ ックな短編を集めた作品集の一篇。
巻末エッセイは長野まゆみ。


『黒のもんもん組』猫十字社(白泉社文庫)
1978~1982年に、当時もっとも先鋭的だった少女まんが誌「LaLa」に連載され、 個性豊かな作品群のなかでもひときわ異彩を放っていたギャグ漫画。
タコのルーちゃんをアシスタントにこき使う少女まんが家のとらじゃ、アイパッ チが粋? で卵も産める男色家のかりた、
ごきぶり怪獣に変身するめりたの三人 組が、パワー全開、あらゆる常識を尻目に、たたけばほこりの出る青春を邁進する本作は
「少女まんが」というメディアが持っていたあらゆる要素を記号に転化、徹底的におちょくることで笑いのめしてしまった極北的作品だった。 
「しゃかしゃかしゃか」「ももももも」「ぬりぬり」「ぐべどーん」「とらぬた ぬきとらぬたぬき」などの擬音自体がネタとして誌面をとびかい、
うりざねをは やした逐電少年は多感性になって伏せ字に押し倒され、
美少年の集まる銭湯はとらじゃの襲撃でネタ切れに苦しむギャグ中毒患者の巣窟と化し、
奈良と鎌倉の大 仏は熱海の海岸で「一歩ススんだヘヴィー・ゲイの世界」を繰り広げる。
何のこ っちゃとお思いになるかもしれませんが、書いている私にも何のことだかわからない。
シュールで捻ったギャグ満載の本作の破壊力は、ともかく読んでいただいた方が話が早い。
その目で、愛と涙と希望と夢? と、いじましさ溢れる「黒もん」の暴走をぜひどうぞ。 
しかし、できれば白泉社さんには『小さなお茶会』だけでなく、こちらの完全版も出していただきたいと切望する次第。
文庫版では尻切れトンボのエピソードも あるので、読んでいて欲求不満になるのも事実。是非に、是非に!


「クローディーヌ…!」池田理代子(中公文庫コミック版『池田理代子短編集3』 収録) 
8歳のときから、自分を男と信じて生きた女性・クローディーヌ。
才能と美貌に恵 まれ、何人もの女性と情熱的な恋に落ちながら、すべてに破れ、死を選ぶに至る 彼女の激しい生涯を描いた作品。 
兄弟たちよりも男たらんとし、己の信じるところを生きて、けれど「不完全な肉体をした男性」であったがために、
欲した愛すべてに拒まれる彼女の姿は、現代 でなら「性同一障害者の悲劇」とでもされるだろうか。
しかし作者の激しいペン 先は、クローディーヌを自らの信念と愛に殉じたものとして描き、きわめて華麗に、
ドラマティックに描き出している。 その怒涛のドラマツルギーは『ベルサイユのばら』『オルフェウスの窓』の代表作を生んだ作者ならでは。
彼女が自分を男と信じるようになったきっかけは、敬 愛する父親が愛していた少年と同化したかったから、
という話の出るくだりもあるが、何はともあれ、主人公の炎のような生涯にうたれて静かにページを置きたくなる一編だ。


「いまあじゅ」おおやちき(サンリオ『おおやちき作品集 雪割草』収録
左眼が見えないことを隠し、勤勉な優等生として寮生活をおくるデールは、その影で過去へのおさえきれない思慕と、
罪悪感に苦しんでいた。ある事件により、
同級の少年に左眼のことを知られた彼は、
なりゆきでその少年と一夜を過ごすが
、ベッドの中でも彼の追想と悪夢は終わらない。
70年代半ばに「りぼん」誌上で活躍したおおやちき(当時は大矢ちき)は、何よ
りもまずその緻密さと描きこみの凄まじさ、
複雑な構図やレイアウトが生む、一
種マニエリスム的な絵世界が注目された作家だった。
本作は、わずか16Pの短編
だが、ストーリーらしいストーリーを持たないかわりに、前述のような彼女の絵世界が濃密に凝縮され、
ひとりの少年が抱く後悔や不信、ノスタルジアに振れる
心のひだを、何よりも絵でもって描きだした実験的な作品。
ミュシャの影響が見
られる背景や画面のレイアウト、多用される点描、「おおやちき描線」としか言いようのない
個性的な線(ペンで細かく引っ掻いたような……しかしあの線を本
当に何と言えばいいのか。ボギャブラリィ不足ですいません)
で綴られる人物像
など、作者の“絵”の魅力がふんだんに詰まった伝説的な一作だが、
残念ながら
原稿が火事で焼失し、今後作品集等が編纂されても、掲載される可能性はないのだとか。
おおやちきの凄みはこれを読めば充分にわかる、という作品だけに、事実上幻となっているのが惜しまれる。


『カトゥーンズ』岡崎京子(角川書店)
「?Iカン太君の恋人」…カン太とハルは同級生の恋人同士。
期末テストの前夜に
も、ハルはカン太の家に泊まりこみ、二人はひとつ布団で眠っていた。
同級生の
女の子オダワラから手紙を渡されたりもするが、その手紙を読むことよりも、
験が終わってハルと二人で映画に行けることのほうが、カン太には重要なのだった。
ラスト1コマが次のエピソードへ続くという形で全体が連作になった短編集のうちの一話。


「戦場に咲いた赤い薔薇」東峯子(単行本未収録)
全員が男色家という軍隊が、戦場の片隅で引き起こす騒動を描いたドタバタコメディ。
当時はまだ珍しかった(たぶん漫画初登場)デビッド・ボウイなどのロック・アーティストをパロディ化した登場人物、
マツゲチック・ザワザワスキーなどのネーミングなど、とにかく明るくナンセンスに全てのエピソードを笑いとばしていく描写は、
当時としては前例がなく斬新だった。1973年に「月刊ファニー」(虫プロ商事)の復刊第1号に掲載され、
その後長く幻の作品となっていたが、1982年に「JUNE」No.3に突如、再録された。
このときには作者のインタビューも併せて掲載され、本作を描いた経緯などが語られていた。
私の記憶が正しければ、一度も単行本化はされていないはずなので、
興味ある方は古書店やネットオークションにて掲載誌をお探しください。


『いつ海は同じ色に輝くか』葵奈々(朝日ソノラマ/サンコミックス・全2巻)
これ以前には峰岸ひろみの名で少女漫画家として活躍していた作者が、70年代に女性週刊誌にて連載した長編サスペンス。
海に面した豪華な別荘地を舞台に、女優志望のヒロイン、彼女の親友の美女、その夫の人気作家と、
彼と深い絆で結ばれた美青年などが登場し、耽美的な雰囲気の中、謎に巻き込まれていく姿が描かれるが、
一見ヒロインの恋を前面に出しているように見えながら、美青年・進を中心とする男たちの執着や愛情がそこかしこに匂わされ、
物語の通低音として男色の影がうかがえるあたりは、この作者ならでは。
意表をつく展開には驚かされるが(ある意味トンデモ作品ともいえるかも…)、実験的なコマ割りなど、当時の作者の才気走った感覚がうかがえる。
本作のほか、葵奈々名義で女性週刊誌に掲載された作品の中には、
レズビアンを題材にした「我が心に刻まれた道標」や、伝奇SFながら時折男色ネタが絡むシリーズ「百鬼坂には狼男と未亡人がいるよ」、
のちに峰岸ひろみ名義で単行本化されたSFホラー『晴れた晩には魔界が見える…』(東京三世社/マイコミックス)などがある。
また、これら以外にも、1960年代末期には“海城彬”のPNで「週刊漫画」「コミックVAN」などの劇画誌に、
男色をモチーフにした作品の数々を発表。この当時の作品のうち「檻の中」が、『神崎春子の世界』(コアマガジン)に収録されている。
が、いずれにせよほとんどの作品が単行本化されていないのが惜しまれ、
男色表現についてもその他の面についても、つねに先駆者であった彼女の作品の再評価を望みたい。


「至上の愛」山上たつひこ(『喜劇新思想大系』収録)
三味線師匠の師匠(男性)とその恋人・玉三郎がデートの一日で見せる愛と嫉妬の姿を、
毒をはらんだディープなギャグの応酬で描いた作品。
いきなり最初の大
ゴマから、二人の全裸のラブシーンで始まる展開は、当時の読者のドギモを抜いたことと思われる。
主人公二人がオネエで、彼らが全編にわたって見せる、ギャグとしての過剰なく
ねくねっぷりや女装など、腰が引ける人もいるかもしれないが、
笑えながらもひ
どく残酷な展開や容赦ない描写など『喜劇新思想大系』として括られるシリーズの中でも特に出色の作品。
シリーズ自体は、基本的に、マスをかくことが生きがいの青年・逆向(さかむけ
)春助と、
直木賞を目指すエロ作家・池上筒助、僧侶のくせに煩悩いっぱいの見
習い住職・悶々時次郎というトリオが、
女性(というより自分たちの性欲)をめ
ぐって引き起こす騒動を描いているが、
準レギュラーである三味線師匠が登場る回には、本筋には絡まなくても男色ギャグが登場する。


『うえぽん』いしかわじゅん(白泉社/花とゆめコミックス/全3巻)
MI6の工作員として、日々任務に励む青年・うえぽん。
エージェントと呼ぶに
はあまりに純朴すぎる彼だが、
上司にして有能なスパイ、通称「氷のジョン=ブ
ル」から愛され(プラトニックだが、本当に心を寄せられているという設定)、
見守られつつ、ハード(?)な任務をこなしていく。
当時人気のあったスパイ関連の少女漫画、
おそらくは『エロイカより愛をこめて
』『パタリロ!』などのパロディとして描かれたと思われる作品(何せロシアのスパイとして「ミーシャ」まで登場する)。
だが、登場人物は全員、作者特有の
三等身キャラとして描かれ、画面にも各ストーリーの設定にも緊張感は皆無(良い意味で)。
うえぽんの任務は毎回どうでもいいような事で解決され、その裏側
では男×男関係が複雑に入り乱れる。
くだらないといえばくだらないギャグの連続だが、定番を覆していく作者のパロ
ディ&ギャグセンスの良さで、
楽しんで読めるし、おそらく『エロイカ~』等の作品のファンが読んでも不快感はないだろうと思われる。


『やけくそ天使』吾妻ひでお(秋田文庫/全3巻)
美人でインラン無限のス―パー(?)ヒロイン、阿素子素子(アソコ・ソコ)が大活躍する不条理コメディー。
シリーズ中一度だけ、弟の進也(これが姉とは対
照的に禁欲的でつつしみ深いタイプの男の子)が
素子に意識をのっとられてしま
い、中学校で色んな人と関係を持ってしまう、というエピソードがある。
とりわけ、担任の先生とのファックシーンは忘れがたい(?)。


『伊賀淫花忍法帳』石川賢(双葉社)
上野の国(現在の群馬県)山神藩。古来より女性の力が強いこの藩の城は、
いつ
の頃からか女が守る城、くノ一城と呼ばれていた。
その山神の銅山より大量の黄
金が出土、世継ぎ問題とともにお家騒動の戦が火蓋を切る。
幕府の命を受けた服部半蔵は、くノ一の術に惑わされぬ刺客として、男色家とし
て知られる美女丸と、
伊賀者最大の巨根の持ち主、魔羅の小天狗を送りこむ。穴
さえあれば入れずにおれない小天狗と、彼の巨根にぞっこんの美女丸。
もちろん
、二人はすぐデキて、行く先々で待ち受けるくノ一軍団と、乳繰りあいながらも激闘を繰り広げていく、という、
馬鹿馬鹿しくもハードなギャグ作品。
美女丸が活躍する続編「忍法清水港」も収録されている。


『バイオレンスジャック』永井豪(中公文庫コミック版/全18巻)
地獄地震により日本列島から切り離され、わずかに生き残った人間たちが血で血を洗い生き延びる無法地帯と化した関東。
その地に現れた謎の巨人は、片手にナ
タほどの大きなジャックナイフを握り、行く先々で暴力の嵐を起こす。
男は「暴
力を呼ぶジャックナイフ=バイオレンスジャック」と呼ばれ、荒廃した土地でひとつの伝説のような存在となってゆく。
そのバイオレンスジャックの存在を軸に
、人間のエゴと欲望、生命力が際限なく渦巻くさまを、スター・システム総動員で描いた、永井豪の代表作の一本。
シリーズ物であり、中・短編の連作から成っているが、
そのうち数本の作品に登
場する早乙女門土と身堂竜馬のテロリスト上がりの青年コンビが、なかなか面白い。
中島梓の『コミュニケーション不全症候群』等の評論集でもしばしば言及さ
れているように、
女のような美貌の持ち主である身堂竜馬は、親友・門土にしば
しば友情以上の執着を見せ、
その感情の発露は恋愛のそれと何ら変わらないよう
に描かれている。
しかし、ジャックに劣らぬ暴力の化身のような門土はもちろん、竜馬も武道の達人であり、いざとなれば殺人もためらわない、
美貌のみならず頭も切れる存在と
して描かれているのはさすが少年(青年)マンガで、
二人の本能のまま生きる悪
党ぶりがいっそ小気味よい。
彼ら二人の主な登場エピソードは「激闘!門土編」「黄金都市(エルドラド)編
「ハイパーグラップル編」「鉄(くろがね)の城編」「身堂編」「超高層の悪
魔編」など。

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